ルルーシュは先ほどから自分の隣を歩く人間の様子をちらちら窺っていた。もちろん相手には悟られないようにひっそりと。
その相手とは幼馴染みの枢木スザク。ルルーシュが幼い頃から密かに想ってきて、つい先日めでたくも晴れて恋人同士になった男だ。
くるくるふわふわしたココア色の柔らかい髪に、日本人としては珍しいフォレストグリーンの瞳。歳の割りには幼い造作で、かなり愛らしい顔立ちをしている。―――もちろん、ルルーシュの贔屓目を多分に含んではいるが。
しかし恋人同士になったとはいっても本当につい先日の話なので、もちろんまだ何もいたしていない。
何かした方がいいのか、それともまだ早いのか、見た目に反してその手のことに関しては経験が皆無なルルーシュ。一見涼しい顔をしているように見えるが、彼の頭の中はなかなかにいっぱいいっぱいだった。
友人である期間が下手に長かっただけに、ずっと好きだったとはいえ今更何をどうしていいのか分からない。
正直ルルーシュとしてはスザクが自分の気持ちを受け入れてくれただけでも満たされていたのだが、満足しきってしまうのには無駄に高いプライドが邪魔をする。
男として恋人であるスザクに恥をかかせてはいけないだとか、男として恋人となった相手に何もしないのは男が廃るだとか、エトセトラエトセトラ。ちなみにこの時点でその相手のスザクも男であることはルルーシュの頭の中からすっかり抜け落ちている。
しかし前述したように悲しいかな彼はその手の経験は皆無なので、何かしようにも具体的に果たして何をしたらいいのか分からない。
半ば操を立てるようにずっとスザク一筋でいたのが仇となったようだ、知識だけを詰め込むのではなく実技も経験しておくべきだったか―――!?とは今の彼の心境の一部である。
ルルーシュ・ランペルージはこう見えて一途で純情な男だった。
ルルーシュが先ほどから妙に落ち着きがないのは、以上のような理由からだった。
はっきり言ってスマートでないのは自分でも痛いほどに分かっている。しかしこればっかりはいくら考えても正しい答えなど出るはずもなく、ただただ己の経験不足を悔やむばかりだ(と言ったところでルルーシュに、スザクの為とはいえスザク以外の相手とどうこうする、という思考回路は元より存在しない)。
藁にも縋る思いで何か切っ掛けでもないかとさりげなく辺りを見回してみて、ふと、遥か前方を歩いているカップルらしき男女が目に入る。
遠目で、尚且つ後姿にも関わらずその二人が仲睦まじくしているのはよく分かった。何故なら―――。
(そうか、まずはそこからか―――!)
そんなわけでとりあえず作戦内容は決まった。後はそれを実行するのみ。問題はいかにさりげなくスマートに行うか、だ。必要なのは度胸とタイミングと、ほんの少しの勇気だけ。
当のスザクはルルーシュの激しい葛藤に気付く気配は微塵もなく、相変わらず可愛い顔でルルーシュの隣を歩いている。やはりルルーシュの贔屓目を含んでいたりするが、この際たいした問題ではない。
愛しいスザクの手に向かって自らの手をそろおっと差し出す瞬間、ひっそりと心の中で愛する妹ナナリーに祈りを捧げたことはここだけの話だ。何故ならルルーシュは神など信じていないのだから。
内心、自分がここまで臆病だとは思っていなかったルルーシュ。
同居人の倣岸不遜なふてぶてしさをほんの少し羨ましく思った。もちろん完全に自分のことは棚上げである。自分も普段はしっかり同居人と同じであることには、残念ながらさっぱり気付いていない。
さあ、そんな勇気ある臆病者の手がスザクの手と繋がれるまで後―――
あと、10センチ
書いてるときは気付かなかったんですが、こうやってネットに上げてみると恐ろしいほど短くて唖然としました…。
すみません…。
ていうか何このあほの子って感じですねすみません…。
何があと10センチなのか考えに考えた挙句手を繋ぐまで、と後もう一つくらいしか思い浮かびませんで し た…。
ちなみに管理人は童貞ルルーシュくんでもいいですが、同人の暗黙のルールに則って実は巧いんですなルルーシュくんも好きです。
つまるところルルだったらなんでも好きです^^←
もちろんスザクも好きですよ!
普通に経験有りなスザクもいいし、貞操観念が馬鹿みたいに低いスザクもいいし、意表を付いて初心なスザクも好 き で す…!
うん、誰もそんなこと訊いてませんね!^^