「スザク、何か欲しいものはないか?」
「欲しいもの?」
前触れのないその質問にスザクは首を傾げる。
そんな仕草でさえも可愛いなお前は…。
「ああ。なんでもいい」
「急に言われてもなぁ…。―――あ、シャーペンの芯がそろそろなくなりそうだから欲しいかな」
俺の訊きたかったこととは完全にズレた発言に、一気に力が抜けた。
空気を読め空気を…!
「―――ルルーシュ?」
「…違う。そういうのじゃなくて―――他にはないのか?」
「うーーん…。あ、石鹸ももうないかな」
だから…!
…思わず叫びそうになる。
―――遠回しに言うからいけないのだろうか。
贈る側としてはやはりサプライズを狙いたいのでストレートに訊くのは躊躇われたのだが…。しかし質問の意図が伝わらなければ意味がない。
いくら当人が欲しがってるからといってシャーペンの芯や石鹸などやれるか!
いきなり計画が破綻を迎えたのを虚しく思いながら(もっともスザク相手ではそう珍しいことでもない)、潔く切り替える。
「―――お前、もうすぐ誕生日だろう?だからそれで欲しいものはないかと訊いてるんだ」
「―――ああ」
『ああ』じゃない『ああ』じゃ。
まさか自分の誕生日を忘れてたわけじゃないだろうな!?―――今のスザクだったら有り得るかもしれない、なんて思ってしまったことはこの際なかったことにしておく。
いまいち噛みあわない会話に、思わず頭を押さえそうになるが。
そんなところに、ぽつりと落とされた。
「何も―――いらないよ。そういうものは…何も……」
「――――」
思いもよらない言葉に、不覚にも返事に窮する。
そんな、寂しげな笑顔でそんなことを言うんじゃない。
「―――じゃあ、どんなものならいいんだ?」
怒鳴り付けそうになってしまうのを辛うじて堪える。
無欲ならいいってもんじゃないんだぞ。
お前はもっと―――
「―――別に……。…君が―――君と、ナナリーがいてくれれば、それで」
「―――お前はもっと、欲しがってもいいんだぞ!?」
ああ、堪え続けるのに失敗した。
―――お前が悪いんだぞ、スザク。
そんな顔でそんなことを言うからだ。
そんなふうに今にも消えてしまいそうに、微笑むからだ―――。
「誕生日は、生まれてきてくれてありがとうって言う日なんだぞって、教えてくれたのはお前だろう!」
そうだ。七年前、お前は確かにそう言った。
ちゃんと覚えている。
自分の誕生日などどうでもいいと吐き捨てた俺に、すごい剣幕で言ってきたじゃないか。
本当は誰からもそれを言われたことがなかったお前の、それが一番欲しかったものなんじゃないのか!?
俺が何も知らないと思ったら、大間違いだぞ!
「っ、……―――そんなことも、言ったかもね……」
そんな顔をするな。
そんな顔をするな。
「泣きたいなら泣け!そんな顔をして無理に笑うんじゃない!」
「――――」
お互いに、言葉が出なくなる。
スザクは相変わらず泣きそうに微笑っているだけだし、俺はどうしようもない憤りに身体を震わせているだけだった。
昔は、もっと感情をぶつけてきたお前だというのに―――。
七年という時間の長さを憎らしく思い始めた頃、ふいに、スザクが口を開いた。
「―――……じゃあ、約束、して?もう、離れ離れにならない、って」
「――――」
「七年は耐えられた。でも次はもう、耐えられないかもしれない。……君と再会してから、あたたかい時間を過ごしすぎた……」
「―――…ああ、わかった。約束しよう。もう二度と、お前の傍から離れたりしない」
「―――ありがとう……」
そう言って、安堵したように微笑うスザク。
張り詰めていたものが少し、解けたように感じられた。
―――ああ、約束しよう。
お前がそれを望むのなら。
いずれそれを守れなくなってしまうのがわかっていてもそれでも、約束しよう。
それがお前の望みだから。
だが、スザク。
もうすぐ来るお前の生まれた日には、あのときお前が一番欲しかった言葉をやろう。
あのときは結局、恥ずかしさが邪魔をしてちゃんと言ってやることができなかったし、お前が形あるものを何も望まないのなら、俺がお前に贈ってやれるものなんて、それくらいしかない。
けれど俺の本心だ。
スザク。
お前が生まれてきてくれてよかったと、本当に、心からそう思っているよ。
七年前、全てに絶望していた俺たち兄妹を救ってくれたお前が、そんなふうに哀しげに微笑うのではなく、昔のように微笑ってくれるようになるにはどうしたらいいんだろうと、俺はずっと考えているんだ。
この言葉が少しでもその切っ掛けになってくれればと、願っている。
お前はもっと、胸を張って生きていいのだから―――。
君に星屑が降り注ぎますように
書き上がったのは酷い日付ですがこれはスザク誕生日話です…。
なかなか上手く纏まらなくて一苦労した…。
ていうか相も変わらずスザクが別人でごめんなさい…。
うちのスザきゅは『儚い』標準装備のようです…。
実際スザクだったら何欲しがるかなぁと考えても特に何も浮かびませんでした。
幼少時代ならともかく、今のスザきゅはそれどころじゃないだろうしねぇ…。
言葉で祝ってくれるだけで彼は充分だと思ってるのではないかなー…と、管理人は勝手に思いました(笑)。
だってうちとこのスザきゅは下手したら生まれてきてごめんなさいとか言い出しそうな子なので…。
どうもね、七年前のことで、自分の存在を卑下してる節がある気がするのですが…それはひょっとしたら管理人の妄想かもしれません…。
しかしハピバ小説のはずなのにどうしてこんな暗いかな(笑)。
ちっとも祝えてない気がするのは管理人だけじゃないと思います…。
祝う気だけはあるの…。
ごめんねスザきゅ…。
ルル様にプレゼントは俺だとか言わせたかったりもしたんですが、他のステキサイト様と被ること間違いなしなのであえてやめました…。
そもそも管理人にギャグは向いてない…。
関西人として悔しい限りだ…。
『誰からもそれを言われたことがなかった』ですが、ゲンブさんはあんまりそういうこと言うタイプじゃなさそうに見えるし、友達もいなかったっぽいし…と思ったのでそうなりました。
管理人はどんだけスザクを可哀相な子にしたいんでしょう。