※この話は18話のルルとC.C.の会話(C.C.がルルに『スザクにギアスをかけてしまえばいい』というシーン)の直後と思ってお読み下さい。
ノーネーム
「しかし…不思議なものだな、それは」
それまでと変わらぬ、感情の読めない声で呟く彼女。
元から苛付いていた気持ちを更に苛付かせてそれに答える。
「―――何がだ」
あからさまに刺々しかった声に気付かなかったわけではないだろうに、その女は物ともしない。理解っていたことだが、やはり忌々しい。
「お前はあの男を友達だと言う。それに関してとやかく言うつもりはないが、それは本当にそうなのか?」
普段はいっそ小気味が良いくらいにストレートな物言いをする彼女らしくない、奥歯に物が挟まったような問い掛け。
余計に苛々する。
「『それ』だとか『そう』だとか、お前の質問が理解できない。いつもは必要以上にズバズバ言う癖に、一体なんなんだ。何が言いたいっ」
すると彼女はしばらく考える素振り(本当に何事か考えていたのかは怪しいが)を見せてから口を開いた。
「お前のあの男に対する執着は些か異常なように見える。私はもうそういうのは忘れてしまったが、そんな私でも、とてもじゃないがそれは友情の範疇と思えない」
「―――だから?」
すう、と体温が冷えていくような気がした。
「お前がいいなら私は別に構わないが―――。自覚がないのだとしたら、それは後々面倒なことになるぞ」
「――――」
彼女の言いたいことが理解らない。
何を言っている?この女。
俺が何を自覚していないって?
返事をしないでいると彼女はまるで仕方ないな、とでも言うかのように大袈裟な溜め息を吐きながら首を左右に緩く振った。
不愉快だ。
元より、こいつの行動が自分にとって愉快であったことなどただの一度たりとてないのだけれど。
「―――ルルーシュ。本当に、本当に理解っていないのか?自分のことだぞ?…それとも、気付かない振りをしているだけなのか?」
遠回しにもほどがある。
何のことだかさっぱりだ!えぇい、忌々しい!
「理解るも何も、お前の言ってることが理解できないと言っている!理解させようとするなら、もっと理解り易く言ったらどうなんだ!」
自分の考えがそこに至らなかったことを暴露するようで正直口惜しかったが、それよりもこの、なんとも言えない気持ちの悪さをなんとかしたかった。
俺の怒声にももちろん少しも動じない彼女はひた、と俺を正面から見据えて、言った。
「お前の―――ルルーシュ。お前の、あの男に対する気持ち、それは―――本当に、友情か?と、言っている」
「――――」
自分の目が見開かれるのが理解る。
なんだ?
何を言っている?C.C.。
理解り易く言えと言っただろう?
何一つ理解らないぞ?
お前が何を言っているのか、何一つ理解らないぞ?
何一つ理解らない。
何一つ理解らない。
「―――理解らない振りをするか。…それもいいだろう。お前がそうするのなら、私はそれに従うまでだ。好きにしろ」
そう言い捨てるとC.C.はさっさと部屋から出て行った。
上手く働いてくれない頭を無様にも抱えた俺を一人、残して―――。
あいつの言うことは何一つ理解できない。
…そうだ。
あいつは魔女なのだから、理解らなくて当然だ。
理解らなくていい。
理解ってはいけない。
―――この想いの名など、理解らなくて、いい。
この話を思い付いた切っ掛けは完全に忘れてしまいました(えー)。
ただ、行き付けのア○メイトの近くにあるカフェで書き連ねたのは覚えてます(笑)。
わざわざ18話の会話メモってまで書いたんだけどなぁ…。
微妙と言えば微妙過ぎるほどの話でした…。